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無垢板の反り止め[吸いつき蟻桟]

2022-8-8

わぬは言うに優る。というが…
管理者と技術者のやり取りにおいてこのコトワザは皆無に等しい。
お互い黙っていては何も伝わらない。言葉どころか身振り手振りで現場で説明しあっても伝わらない時もある。
しかしもし間違えて解釈していたら致命的なため、確認に確認を重ねて現場施工されていく…

このように建築施工現場ではそれぞれ様々な視点から意見を出し合い合理的にかつ精度よく施工すべく、創意工夫され生産される。
その完成度は竣工時にきれいなことは当たり前で、特に木材などの経年変化を起こす部材の将来にわたる品質確保も大切な技術者の役割である。
例えば幅の広い無垢板仕上げを採用した場合、経年変化による反りに対応する工夫が必要になる。
今回はその対応策の一つ[吸いつき蟻桟] について少々触れていきたい。

↑こちらはサンプルで急遽作成したもののため、板の長手方向に平行にとりついているが、実際は板の長手方向に対し直行方向に施すこととなる。

無垢の木は呼吸しているため、仕上げに使用される造作材は十分乾燥していることが大前提となる。
ただ、乾燥だけでは少し心配といった場合に無垢板の反り防止として施されるのが[吸いつき蟻桟]なのだ。
無垢板は上部イラストのような変形を引き起こす場合がある
繊維が真っすぐになろうとするためだ…
この反りを低減させるべく無垢板の裏側に施される。
一般的にはテーブル板の反り予防としても施工されるようだ。
この蟻桟もまた木材…出来るだけ狂わないよう十分乾燥させた材が望ましい。
無垢材の変形を見越し、逆に抵抗させるような木目遣いが求められる。
更にこの桟は奥に行くほど食い込むように加工するため何度も調整が必要になる。
ただ桟を取り付けるだけ…しかしその施工には結構な手間がかかる。

このひと手間かけるかかけないかにより10年20年先の満足度が変わるのだ。
みえないところだが将来にわたり満足できる工夫をしている…
そんな工夫を言葉ではなく仕事で感じることができた時、まさに”言わぬは言うに優る”と思えるのかもしれない。
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