20年先を見据えた断熱設計
2024-9-17
大幅に改正される建築のルール。
上記画像は先日、国土交通省から届いた法改正のお知らせ。
その一つに省エネ基準適合義務がある。
これは住宅使用時にかかるエネルギー消費量を減らし、CO2排出量を削減することが目的である。
省エネ基準に適合した住宅は相応の断熱性能を持つため、将来にわたりエアコン等の使用料などを抑えることができ、長期的に見れば使用エネルギーを大幅に削減できるのだ。
20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会だ。
UA値はZEH以上の性能を要求され、そのレベルはドイツなどの断熱先進国の基準に近い。
先日幸運なことに、ドイツのパッシブ認定を受けた住宅実例を見学することができた。
聞けばUA値は0.22。その断熱材の厚みに驚き、また太陽光などの自然エネルギーを上手に利用し、同じ東北地方であるにもかかわらず電気の利用は冬季の1月、2月のみとのことであった。
ざっくりシミュレーションしたがUA値を0.28まで下げるには少なくとも内窓又はトリプル真空ガラス及び付加断熱は必須であることが分かった。
(福島県二本松市は4地域だが、当社の本拠地である東和地区は標高の高さから3地域に指定され、20年後の地球を考えたときに目指したいランクの等級6以上をクリアするにはUA値を0.28以下の性能を確保することになる。)
ただ、その手法は単純にサッシや断熱材のグレードを上げればいいというわけではない。
付加断熱とはその名のとおり、壁を付加した部分に断熱材を施工する方法。
外壁サッシの納まりや付加す部分の強度確保。さらに壁体内の結露計算は耐力壁を介すので複雑になる。
さらに数値上UA値のみの性能を確保すればいいというわけではない。
東北地方にはおいて冬の日射熱は積極的に取得したいため、窓を小さく計画してUA値のみ下げても快適に過ごせるわけではなさそうだ。
また断熱材の種類にも配慮したい。
上記はライトを照らし、断熱材を置いた下部に温度計を置きその数字を表示させたもの。
右がお馴染みのフェノ-ルフォーム。熱伝導率は0.019であるが、その数値性能では劣る左の木質系断熱材(熱伝導率0.044)のほうが熱を伝えていないのが分かる。
素材的にも自然素材なので好ましく、積極的に採用したい建材だが、数値上では劣るのは疑問が残る。
いずれにせよ断熱性能の向上には、建設時のコストが嵩み現実的に採用しにくい側面がある。
しかし、大袈裟ではなく断熱性能向上は地球温暖化防止に寄与する。
法改正により省エネ適合が義務化される2025年以降は、さらに慎重な建材・断熱材の選定と施工、また数値だけでは測れない快適性があることを理解した断熱設計が求められてくるだろう。