DIYと法的責任の境界線
2026-5-13
知らなかったでは済まないことがある。
例えば、冠婚葬祭の作法や祭りのしきたりなどは、多少の差異があっても謝罪すれば済むことが多いだろう。
しかし、法律に関わることは「知らなかった」では済まされない。
規準に適合してなければ、即時罰則の対象になってしまう。
なぜこんな話をするのか?
近年、建設業法・建築士法の改正は多岐にわたり、内容についていくだけで精一杯なのだが…
今までどおり法令順守で施工するだけではなく、その法改正の情報をつかみ、順次アップデートしなければ、いつの間にか違法になってしまう恐れがあるからだ。

先日受講した一級建築士定期講習でも、認識を改めることが多かった。
その一つが、罰則対象者の拡大である。
今まで建築士が関与している物件では、当然に法令順守で設計・監理されてきた。
その反面、施主が自主施工(DIYなど)している範囲については黙認されていたのだが…
今後は誰が施工しようと違反と認められる場合は、建築主・工事監理者・工事施工者・建設資材納入者までに拘禁刑※が科されることがわかった。(法98条)
具体的に言えば、施主施工(DIY)の内容が構造規定や防火規定に違反した場合にも罰則が科されるということだ。
物価高騰に所得が追い付かない現状では、施主施工(DIY)を施しながら、なんとか建築を実現していた物件もある。
そうした状況を踏まえると、この改正は冷酷に感じるかもしれない。
しかし、長い目で見ればストックされていく不動産の価値を高めるため、構造や法律を遵守した形で改修を進めることは望ましいともいえる。
よくよく法文を読み込めば、今後もDIYで出来ることは多い。しかし、どこまでがDIYで許され、どこからが法的責任を伴うのか――その境界線を理解しておくことが重要だ。 不安な方は一度近隣の建築士に相談すれば安心だろう。 (物価高の影響からか、ウチもこの数年でDIYについての相談が増えている)
ただ、個人的な肌感覚で勝手なことを言わせてもらえば、今後数年は工事をする人が減少していくのではないかと危惧してしまう。
建設業法でも不当に低い金額での受注は制限され、それを守らなければ建設業法違反となる。(これは元請けが下請けをたたいた結果、施工不良になり品質が落ちるという事例があり、これをなくすための施策だと認識している)
しかし、仕入れや人件費自体が上がっているので、適正価格で掲示するも、それを受け入れられるクライアントは稀だ。
こういった実務上のやり取りからも「こんなに高額になるのならもう何もしないでおこうか…」というあきらめに満ちた空気感を感じていたため、着工に至るまでの道のりはより険しくなるはずである。
発注者側だけでなく、受注者側も八方塞がりの状況といえるだろう。
職人不足も叫ばれるなか、技術継承にはコンスタントな受発注が望まれるが、業界自体がいつまでこの状態を保てるだろうか…
少しずつ社会秩序も乱れているように感じる。
では、我々に今できることは何か。
ひとまずは、法令や構造・設備に対する助言に加え、DIYでできる線引きを明確にしておくこと。
そして今まで以上に説明責任を果たし、クライアントに寄り添った業務を続けること。
その積み重ねが、適切な価格での受注を生み、ひいては建物の安全性と職人の技術を守り、クライアントの資産価値を担保することにつながると信じている。
不安をあおっても仕方がない。 慌てず、急がず、できることを積み上げていくしかない。
※拘禁刑とは2025年6月より懲役と禁錮が一本化された刑罰をいう