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スパウトとシンク奥行きの関係

2024-5-23
面台は既製品からセレクトするのが当たり前だった。
私が家業に携わるようになった2008年ごろ建設業界はHMのローコスト住宅競争が激しく、坪30万程度で仕事の取り合いが行われていた。
今では考えられない価格設定である。
必然的にすべての仕様は仕入れやすく、安価なものを選ぶことになり洗面台にこだわるというニーズが少なかった。
↑こちら既製品洗面台のイメ-ジ。
この洗面台が安価だというわけではないが、既製品というと各メーカーの設定の範囲で選ぶこととなる。
そのため細部ディティールを考える機会が少なくなってしまう。
考え方によっては設計の手間が減るので当方にとってはありがたい?話でもある。
ただ近年のニーズを振り返ると、既製品よりも少し違う何かを求めるクライアントが増えてきた。
先日引き渡しになったリノベプロジェクトも洗面台にこだわりを持っていた。
↓下記は施工図イメージ
頂いた画像をヒントにクライアントの理想イメージを紡ぎ、一つ一つの部材を決めていく。
完全オーダーメイドの洗面台は既製品でセレクトするだけとは訳が違う。
その中でも今回一番気を使ったのが、壁付水栓から出る水栓のスパウトとシンクの奥行き関係だ。
シンク奥行きの真ん中では蛇口が出すぎて使いにくい。
かといって壁側に引っ込みすぎても手を洗いにくい。
シンク奥行き寸法にもよるが、今回はシンク奥側から約80mm程度の位置に決定した。
何度も施工図を書いてできたオーダーメイドの造作洗面がコチラ↓
結果ちょうどいい位置関係だったと自負している。
既製品のセレクトでは考えることの少ないスパウトとシンク奥行き関係だが、本来は建築家や設計者が考えるべきディティール。
配管関係も既製品と比較すれば施工に神経を使ったが、オンリーワンのものができる喜びは既製品ではなしえない。
無垢板の収納に前框、ライニング部分にはボーダータイルをアクセントにした洗面台はRの垂れ壁を介し正方形の額縁ベンチと相まった空間構成に一体化させることができた。
リノベプロジェクトならではだが、利用できる部分を残し、そのリソース分をこういったクライアントのこだわりに尽力していくことは今後のストック型社会でますます活きてくるだろう。




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