ある建物の材木と一本一本向き合い墨を打っているとき、こんな四文字熟語が頭に浮かんできました。
その建物は住宅でしたが、非常に大きく一本一本の材木と向き合うのが正直しんどいと感じ始めたときです。
しかし、ここで妥協してしまったら全てが台無しになる…そんな思いと、自分自身へのけじめとして最後までやり遂げなければ…と吹っ切れた瞬間「一刻入魂」を胸に”一本一本丁寧にやろう”そう自分に言い聞かせ、また墨を進めていました。
墨付けで何故「一刻入魂」と思われるかもしれませんが…
我々 大工は材木を”鑿”や”鋸”で手加工することを「刻む」と言います。
その「刻み」の目印となるのが「墨」
”刻み”一つ一つに魂を込めたい。
「一刻入魂」にはまず正確な墨付けが基本なのです
(刻むときに、”のこ目”の入れる位置、穴掘りの位置等 墨が正確じゃないと、材木相互の効かせ具合に影響を及ぼします)
もちろん刻みは、その墨を正確に読み取り、建方時には施工しやすいように、また組みあがったら効かせどころがガッチリかみ合い堅牢な構造体になるようメリハリの効いた仕口・継手に作り上げます
金物の使い方が重要視される時代になってしまいましたが、もっと大事なことは一つ一つの「刻み」
今日も「一刻入魂」を胸に一本一本大切に刻んでまいります