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手刻みにこだわる理由

其の壱 木の持つチカラを最大限発揮させるため

「この木はどっちが上かわかるか?」

ベテランの大工さんにそう問われたのは入社当時の自分でした。

今はこの問いを新しい仲間を迎え入れるとき自分がするようになりました。

大工にとって木の特性をわかっているかどうかは非常に重要な知識だからです

とはいえ、現代の工場加工(プレカットといいますが)されてくる木材を組み立てるだけなら、こんな知識はなくても建物を作れちゃうのが事実…

合理化を求め、省力化を求め、利益を求めれば現在はプレカットが今や当たり前になっております。

ですが、当社は自社の作業場で墨を付け鑿や鋸を使用し手で加工する”手刻み”の工程を大事にしております。

なぜなら、は生きています

一本一本特性が違います。

産地、樹種、末か元か、目の積み具合、含水率、節の多い少ない、このあとどう成長するのか等‥一本一本”木”と語り合いながら、この建物のどこに使うかを見定める。

こうして”木”の持つチカラを最大限引き出すこと

これは大工の大事な仕事の一つと考えています。




其の弐 自由な継手・仕口が実現でき丈夫な建物となるため

継手・仕口といってピンとくる方は相当建築の知識がある方でしょうね…
このように、要するに材木と材木の交わる部分というのでしょうか?

継手には腰掛アリ継ぎ 腰掛鎌継ぎなどが代表的ですが、プレカットなどの工場加工だと”型”がありますので規格外は対応できない部分もありますが、この形状が手刻みなら棟梁の自由自在。

将来の変形を見越しあえて「スカス」部分、見栄えがいいように、またがっちりと”効かせる”ため、しっかり「ツケル」部分のさじ加減も可能

継手や仕口をその場所ごとに適した形状に考えるのも大工の大事な仕事と考えております。

其の参 鑿や鉋の手入れができる大工であるため

「道具を見れば大概その人の実力はわかる」

ある人に言われた言葉です。

腕の立つ大工さんは寡黙で余計なことをしゃべらず、黙々と仕事をするイメージですが、その現場は資材と整備された道具が整然と並んでいるものです。


研ぎに研がれ短くなった鑿や鉋、鋸などを見ればどんな修羅場をくぐってきたのか、どんな気質の人なのかわかるということでしょうか?

コレがプレカット加工された材木を組み立てる場合、ある程度の電動工具が使えれば事足りてしまいます。

悲しいことに手道具である鑿や鉋の手入れは必要なくなってしまうのです。

新築を建てるだけなら、プレカットしてくみ上げる工法で問題ないでしょう。

問題はその後何か修理が必要になったとき、増改築や減築工事が必要になったとき、
きっと鑿や鉋を使って継手や仕口を作れる大工さんが必要になるはずなのです。

其の肆 規矩術継承のため

手刻みするということは、一本一本"木の目"をみて”墨付け”をするということになります。

プレカットでは加工機に入れてコンピューター通りに加工される過程のコンピュータ入力部分になりますが…
一本一本"木の目"を見るわけですから、木の特性を知らなければなりません。

さらに元来受け継がれてきた「規矩術」を覚えなければなりません。
指金の当て方の原理原則から、曲がった木の使い方や勾殳玄(ピタゴラスの定理)などなど

コンピューター任せではなく、人間の頭で考えて墨を付ける。

棟梁の思い通りに木割ができ、自由な小屋組み・継手・仕口が実現できる。




だから頑丈な建物ができる

自分で建てる建物に対し大工・棟梁が責任を持つため”規矩術”は受け継がれなくてはならない大工技術の一つなのです。
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